「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」予告編ムービー
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」あらすじ
俳優のリック・ダルトンはかつて数々の作品に出演したTVスターだったが、人気が衰えた現在、今後のキャリアについて悩んでいた。
そんなリックの頼れる友クリフ・ブースは、スタントマンとして、そして世話係として何時もリックのことを支えていた。
俳優として藁にもすがる思いのリックが住む家のとなりに、輝くオーラを放つ夫婦が引っ越して来た。その夫婦の正体は今をときめく女優シャロン・テートと映画監督ロマン・ポランスキーだった。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」感想
舞台は1969年のアメリカ・ハリウッドということで、劇中の音楽やファッション・広告やTV番組など馴染みがない文化ばかりなのに、古き良き時代を描きたいという思いがひしひしと伝わり、終始心地よい空気感。
レストランの駐車場でキーを渡して駐車を代行してもらう(バレットパーキングというらしい)シーン一つとっても、和やかで興味深いです。
僕は「60年代どころかどの時代のアメリカも大して知らない」人間なんですが、その馴染みの無さゆえの異世界感がハリウッドの街並みを魅力的に見せるのか、非常に楽しめました。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」レオ・ブラピが渋カッコいい!

レオナルド・ディカプリオ演じるリックは、俳優として脚光を浴びた過去と、若い俳優との世代交代を迎えつつある現実との落差に苦悩する。
しょっちゅうタバコを吸っていて渋いオヤジ臭が漂っているけど、決して悲愴感に浸っているばかりじゃなくて、激情の精神も持ち合わせていて、非常に厚みのある主人公。
ブラッド・ピット演じるクリフは、リックに雇われたスタントマンだが、リックを撮影現場へ送り迎えしたり家のアンテナを修理したりと世話係も務める。
リックにとってクリフは親友であると同時に精神的支柱でもある。それもそのはずで、スタントマンという職業柄屈強な体つきをしていながらもリックのワガママに文句ひとつ言わない物腰の柔らかさも備えていて、面倒見が良い。しかも愛犬家。「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」を体現した人物。
ブラピ自身は50歳を超えていますが、後ろに流したナチュラル風の髪型にアロハシャツという出で立ちで、住居はトレーラーハウスと、若々しさとともに型にとらわれない性格が窺えます。
劇中ではクリフのドライブシーンが頻出するのですが、カーステレオから聴こえるボヘミアンミュージックも相まって、ブラピの横顔だけでとても絵になるんですよね〜。
ちなみにリックは「クソヒッピーども!」とヒッピーに対して辛くあたる場面が多いですが、クリフという一番身近な存在がまさにヒッピー的な気質を持っているというのが皮肉で面白いところです。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」シャロン・テートは味付け程度?

シャロン・テート(マーゴット・ロビー)はテーマ的にはもう1人の主人公といってもいい人物。というのも、この映画は1969年8月9日に起こった「シャロンテート殺人事件」という実際に起きた痛ましい事件を主題としているから。
新人女優であるシャロンは、売れっ子監督のロマン・ポランスキーの妻で、リックの家の隣に引っ越して来たところからプロローグが始まる。リックとクリフは架空の人物ではあるが、シャロンの引っ越し自体は史実通りで、事件の大きなきっかけになってしまう。
つまり、リックたちの存在がシャロンの未来にどう影響するのか、というのがフィクションとしての見どころの一つだといえます。
ただし、シャロンはリックの隣人であるけど、逆に言えば隣人というだけなので、リックたちと直接関わることはほぼなし。シャロンテート事件をテーマとしつつも、あくまで物語の一要素としているので、事件の詳細を知らなくても楽しむことができます。
ただ、リックたちと直接的には関わらないものの、ダンスパーティを楽しんだり映画の主演を務めたりと、丹念に描かれるシャロンの前途洋々な様子が、リックの冴えないワークライフの印象をいっそう強くしているんですよね。
もちろん今映画でのヒロインとされているので、最終的には物語の主軸に絡んでくるけど、それはかなり終盤でのことになります。
ちなみに劇中でシャロンテート事件についてのメタ的解説は一切ないので、この映画を最大限楽しみたいならば、公式サイトやWikipediaで少しでも予習しておくことをオススメします。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」開放感溢れるラスト
リックたちとシャロンの物語がずっと平行線をたどっているぶん、それぞれの物語の交錯するタイミングへの期待もあり、160分という上映時間も長さを感じませんでした。
待ちに待ったラストへの収束が気持ち良い!
PG-12の所以となるシーンはこのラストシーンに集約されているといっても過言ではなく、かなり強烈。「ハリウッドの闇」といわれるシャロンテート殺人事件の残忍さがこれでもか!と表現されています。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」まとめ

見ているだけで副流煙の影響に苛まれそうなほどタバコを吸いまくる二人。ベテランのレオとブラピに漂うイケてるオヤジ臭さは、様々な役柄をこなしてきたからこその渋さ。
その渋さに加えて、リックが見せるしおらしい表情やクリフの猟奇的な一面など、大きく感情を揺さぶられるシーンがちりばめられていて、ハートフル&スリリングでした。
二人の存在感を際立たせるような全盛期ハリウッドの雰囲気も目に楽しいため、個人的に「ラスト13分」以外の約150分だけでも十分観る価値があったな、と思いました。
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