「蜜蜂と遠雷」あらすじ&ネタバレ感想。妖艶なる月夜の連弾。

邦画
「映画『蜜蜂と遠雷』公式サイト」より

「蜜蜂と遠雷」予告編ムービー

映画『蜜蜂と遠雷』予告【10月4日(金)公開】

「蜜蜂と遠雷」あらすじ

若手ピアニストの登竜門である芳ヶ江国際ピアノコンクール。

7年前に母親を亡くしてから鳴りを潜めていた、かつての天才少女・栄伝亜夜はピアニストとしての復活を遂げるため、コンクールに出場する。

亜夜はそこで他の日本人コンテスタントたちに出会い、影響しあっていく。

亜夜の幼馴染のマサル、サラリーマンとピアニストの二足のわらじを履く明石、そして16歳にして天才音楽家の推薦を受ける塵。

見事優勝を果たすのは誰なのか?

「蜜蜂と遠雷」感想

コンクール本戦に出場する4人の登場人物は全員音楽の天才。その天才同士が影響し合っていく様は感覚的なもので、多くの言葉は必要とせず、言葉を交わす代わりに音楽を通して触れ合うさまはある意味厳かでもあります。

僕は普段、クラシックは聞かないのですが、何も考えず身を委ねているだけでも心地よいピアノの音に包まれている感じ。文字情報のみの原作版では、どのような表現になっていたのか気になります。

当然クラシックに関する知識もないので、演奏される曲の難しさとか選曲の意味とか、正直全く分からなかったのですが、映画全体の雰囲気になぜか飲み込まれてしまうんですよね。というのも登場人物たちの会話のアドリブ感がスゴくて、「役者たちが話していたところにたまたまカメラがありました」くらいの自然さ。その自然さが不安定さにも繋がって、終始不穏な空気が流れているので「この次は何が起こるんだ…」とのめり込んでしまいました。

だからといって劇的な人間ドラマがあるかといえばそうではなく、4人それぞれが自分の過去や理想と向き合って戦っている。全体の湿っぽい雰囲気と逆行するように描写されるコンテスタントたちの秘める意思の大きさが見どころです。

「蜜蜂と遠雷」4人のコンテスタント

Youtube 映画『蜜蜂と遠雷』予告 より

松岡茉優ちゃん演じる栄伝亜夜は、7年前の母親の死をきっかけに表舞台を離れていたが、今回復活を遂げるためにコンクールに出場する。
ピアノ教師でもあった母親が与えた影響は大きく、母親の隣で一緒にピアノを弾く亜夜の回想シーンが度々差し込まれます。また、塵くんや明石の奏でる音にインスピレーションを受ける描写もあり、その様子はもはやスピリチュアル。一体亜夜の脳内で何がひらめいたのか全く分からないし、雨のなか疾走する馬のイメージは何を意味していたのか…。

ダニエル・ホフマンという、界隈では有名なピアニストに見初められた天才・風間塵を演じる鈴鹿英士くんは、その無垢な表情からくる幼さやあどけなさが本当に役柄にマッチしているし、超絶技巧のピアノシーンとの対比はまさにギフテッドな風格。「世界が鳴ってる」という一歩間違えればイタさまで感じてしまうセリフも、「塵くんが言うならば世界が鳴ってるんだろうな」と納得してしまうほどの雰囲気があります。

森崎ウィンくん演じるマサル・カルロス・レヴィ・アナトールは、優勝候補筆頭でルックスも良いことから女の子にチヤホヤされている冒頭シーンが印象的。それを見て、「これはナルシスト特有のウザキャラかな?」と嫌な予感がよぎりました。が、その予感は良い意味で外れました。
幼馴染であるあーちゃん(亜夜)の一挙手一投足を気にかけていたり、自分の代わりに調律師を怒るジェニファを鎮めたりとウザい人どころかメチャクチャ善人。その後の堅物なオーケストラ指揮者との練習に四苦八苦して「どうしてこの曲を選んだんだろう」と後悔するシーンに見えるように、4人の中でも一番人間っぽさがある気がして、マサルは個人的にお気に入りです。

人間ぽいといえば松坂桃李くん演じる高島明石。楽器店に勤める傍らピアノに打ち込んでいたが、年齢制限ギリギリの28歳であることから、今年最後のコンクールと覚悟を決める。妻と息子もいて、庶民派代表というような位置づけ
亜夜・塵・マサルの3人の才能を目の当たりにして「いやぁ…。すごいなあ」と感嘆するシーンが多くて、ピアノにリソースの全てを注ぎ込んできた彼女らと、家族や仕事などの生活がある自分との差を度々突きつけられるんですよね。元同級生の雅美(ブルゾンちえみ)と会話するときにも、明石は鼻で笑うようなクセがあり、どこか自嘲気味。
ただ過度に自己卑下に陥ることはなく、「生活に根ざした音楽」という自分にしか出来ないスタイルを貫いて見事予選を通過する実力もあるし、知人の伝手をつかってピアノを探す亜夜を助けたりと、ライバルと言えるコンテスタントにも手を貸す優しさもある。

クラシックやピアノにあまり馴染みのない鑑賞者にとっては、明石の「どこか別の世界から俯瞰するような視点」が、物語に入り込ませてくれるキーとなっている気がします。

「蜜蜂と遠雷」それぞれの戦い

Youtube 映画『蜜蜂と遠雷』予告 より

世界中のピアニストが集うコンクールのなかでも予選を勝ち上がった日本人同士が関わり合うのは当然なのかもしれないけど、それを踏まえても、この4人は当然のようにお互いに影響し合います。

ただ、積極的に助けるというよりはピアニストとしての自分の道程に他の人がいたから、という偶然的な機会を大事にしている感じ。コンクールという順位を決める戦いなのに、他人を貶めたり足を引っ張ったりという場面が全くない。むしろ他人を高めている部分もあって、自分の状況を厳しくしているとさえ言えるんですよね。そのぶん、4人はひたすら自分との戦いに勤しんでいる

競争者としてのエゴは見せず、ただただ自分の望む音楽を作り出したいという4人に共通する真摯な姿勢はとても美しいと思いました。

「蜜蜂と遠雷」亜夜と塵の連弾

月明かりに照らされながら連弾する亜夜と塵くんの演奏シーンは圧巻でした。

塵くんが言った「世界に一人になってもピアノを弾く」という心の底からの言葉と、「お姉さんもそうだろう」という魂を同じくした者との出会いの予感。それらを裏付けるかのように、楽しくピアノを弾く2人。

音楽に対する気持ちを分かち合うように顔を見合わせたり、月を見上げて広大な世界を感じて、それをピアノを通じて表現したりと、本当に楽しそうなんですよね。

コンテスタントではなく純粋なピアニストとしての2人が垣間見えるからこそ、このシーンが強く印象に残りました。

「蜜蜂と遠雷」艶やかな松岡茉優ちゃん

Youtube 映画『蜜蜂と遠雷』予告 より

上記の塵くんとの連弾シーンに限らずなのですが、ピアノを弾く松岡茉優ちゃんが妙に色っぽいんですよね。

茉優ちゃんは明るいイメージなのですが、今作で演じる亜夜はあまり喋る人物ではなく、表情もどこか儚げで、薄幸の少女的な雰囲気がとても美しい。

普段の亜夜の妖しげな雰囲気に加え、ピアノの演奏シーンでも妖艶さが伺えます。スラッとした指先の動きとか、激しい演奏に伴って乱れるボブヘアーだとか、毛先が口元にくっついてるところとか、色気を感じる細かい要素がたくさん。そんな茉優ちゃんに目が奪われること必至な作品です。

「蜜蜂と遠雷」感想のまとめ

ともかく亜夜を演じる松岡茉優ちゃんの演技がすばらしい!
まるで生き物を扱っているかのようにピアノを弾いたり、マサルとの気兼ねない会話で微笑みを見せたりと、あまり喋らない役なのにキャラを立たせきっている。

脇を固める3人も負けず劣らず魅力的。
マサルは優勝候補ではあるけれど、ピアノの師匠やオケの指揮者と方向性が合わないという悩みを抱えている。明石は実力者ばかりの出場者と自分の立ち位置を俯瞰して考え、自分にしか出来ない音楽作りに執着し、妻に当たってしまうほどの焦燥感が見える。塵くんは鍵盤にむかってひたすらに練習を重ねるという溢れんばかりの異能感。

それぞれの道は違えど、音楽に対する真剣さは4人とも違わず、その道はかならず交差する

求道者たちが交わる点は、一見ドライなようで深く影響し合っているのだなぁと思いました。

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