「フラグタイム」あらすじ&ネタバレ感想。百合アニメのヒトコトで片付けるのはもったい無い!自分のあり方に向き合っていく物語。

邦画
Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

「フラグタイム」予告編ムービー

【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】

「フラグタイム」あらすじ

人付き合いが苦手な女子高生の森谷美鈴は、1日3分間だけ時間を止められる不思議な力を持っている。

ある日、熱心に話しかけてくるクラスメイトを避けるように時間を止めた美鈴は、教室から逃げた先でクラス一の美少女・村上遥の姿を見る。

時間停止をいいことに、興味本位で遥のスカートをめくる美鈴。

しかし止まった世界のなか、あろうことか彼女の口が動き出す。

村上遥には時間停止の力が効いていなかったのだった。

「フラグタイム」感想

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

時間を3分間止めることができる高校生・森谷美鈴がクラスで人気ナンバーワンの美少女・村上遥に恋するアニメーション映画「フラグタイム」を観に行きました!

本作は、著・さと氏の同名漫画が原作となっており、女性同士の恋を描くいわゆる百合ジャンルに属する作品。僕自身は百合作品に疎い方なんですが、女の子が女の子のスカートをめくるという衝撃的な予告編ムービーを観て、心のどこかに火がつき鑑賞に至りました。

予告編の期待に応えるように、ある意味純白の下着こそが2人の関係を繋ぐキーアイテム(?)になるという歓喜の展開で、遥が下着姿をおっぴろげるシーンは、美鈴以上に観ているこちらが恥ずかしくなりました。

百合という関係性に特有の決して立ち入ってはいけない神聖な感じ・遠くから見守ることこそ至高なり…といった性質は、上記のようなお色気シーンにて極致を迎えるのだろうなと思いました。それはもう、「お色気シーン」という陳腐なワードを使う自分が下品極まりなくて申し訳なくなるくらい…。


意に反して前書きの段階で僕の気持ち悪さが露呈してしまったので、以下静謐さをもって「フラグタイム」の感想をつらつら書いて行きます。

「フラグタイム」止めた時間が2人の居場所になる

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

森谷美鈴(以下美鈴)がもつ「1日3分間だけ時間を止められる」能力は、オープニングから5分たらずで「1日3分間だけ村上さんと二人きりになれる」能力になります。

他人とうまく関わることができない美鈴は、今まで人を避けるために時間停止していたけれど、その力に抗力を持つ遥が現れてからは、たった一人の女の子との居場所を作るための能力になるわけです。

1人が2人になる。この変化はメチャクチャ大きいと思います。

映画の冒頭で「3分だけ時間を止められるなら何をしますか?」という美鈴の問いかけがあったので、ちょっと考えてみると、
・道行く人をまじまじと観察する
・開かずの踏切を渡っちゃう
とか結構しょうもないことしか考え付きませんでした。僕は美鈴と同じく根暗な部分があるので、他人の顔に落書きしたりとか度入りのメガネをとっちゃったりとかは、罪悪感に耐えられそうにないので、時間を止めていたとしても他人に関わりたいとは思えない。

3分間の時間停止で得られるメリットよりも、「誰も信じてくれないような能力をもってしまっている」ことの孤独の方が大きくなるんじゃないかと。作中ではSF的設定に関して深く触れられることはないので、完全に僕の妄想なんですが。

でも、「時間停止の影響を受けない人が一人でもいたら?」と考えると、かなり夢が広がる感じがします。この世界に自分の秘密を知っている人がただ1人だけいること、時間停止した瞬間をリアルタイムで観測してくれる人がいることは孤独感の払拭になるし、なにより「世界に二人きり」の状況が生む絆は凄まじいハズ。それがたとえ大嫌いな上司だとしても、「仲良くなれるのでは?」という希望を抱いてしまうくらい。

美鈴と遥も、普通に過ごしていれば卒業まで一切関わり合うことはないと断言できるくらいスクールカーストの対極にいる者同士なんですよね。でも、時間停止によって二人きりで過ごしていくうち、彼女たちの距離は急激に縮まっていく。「そら好きになるわ」と。

「フラグタイム」は60分という短い上映時間だけあって序盤~中盤にかけての展開が早く、気持ちが追いつけない部分もあったのですが、上記のように文字通り「二人きり」という状況と、後述する遥の事情とを考慮に入れて改めて振り返ってみると、その進行の早さにも納得できちゃう。

出会いから成熟までを足早にするかわりに、後半になるにつれて思春期らしい青さや激しさが描かれるのもポイント。その点についてはこれから触れていきます。

「フラグタイム」妬み嫉み僻み…ネガティブの渦

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

美鈴と遥は同じクラスなのですが、彼女らの周りの人たちがとにかく辛辣。見ているこっちも耐え難いくらいの痛ましさなんですが、人が集まるところには醜いモノも必ず付随するわけで、妙に納得感がありました。「まぁそうだよね…」みたいな。

普段は遥と仲睦まじく話している人たちも、影では人気者の彼女を妬んでいる。遥のグループとご飯を食べた美鈴も、陽キャのノリについていけないことを揶揄される。ひとりぼっちの美鈴に話しかける聖母のような存在の小林さんも、漫画家という夢を笑われる。

学校という場所の残酷な部分が集約されている感じで、人間関係のドロッとしたモノをありありと見せつけられます。もう見ていられないくらいに不快指数がグングングングン上昇。

特に、トイレの個室で自分に対する陰口を聞いてしまった美鈴が「こういうことが嫌だったから人を避けてきたんだ」と自認する場面は、あまりにも悲痛すぎました…。

現実でも「自分は嫌われてそうだ」となんとなーく雰囲気で感じ取ることは枚挙に暇がないけれど、幸いにも(?)自分への陰口を自身の耳で聞いたことはないので、美鈴の気持ちを正確に察することができるわけではないのですが…。

ただ、「表面上は取り繕っている」というのは間違い無くショッキングですよね。面と向かって「嫌い!」と言われた方がマシだと思う。

「フラグタイム」自分を保つことの難しさ

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

で、そういった人間関係がもたらすネガティブな感情に、人からできるだけ離れることで対処する美鈴に対し、遥は人へ積極的に向かっていく選択をします。僕は彼女のあり方にも非常に共感できました。

学校という狭い生活空間において1日の大半を過ごすにあたり、周囲の人間の承認を得るのは重要な生存戦略。学生時代、意識するとしないとに関わらず八方美人になっていた人って結構多いんじゃないでしょうか?今振り返ると僕も例に漏れず嫌われることへの恐怖が大きく、イエスマンの如く都合の良い人間でした。

「気が合うからあの人とあの人とだけ付き合おう」みたいな自発的な選択って大人になった今でも難しいことのような気がします。多分、高校生だとなおさら難しい。「誰にでもいい顔をしている」と陰で非難される遥だけれど、「じゃあどうすればいいんじゃ!」とこっちが言い返したくなるんですよね。

で、度がすぎるほど他人本位の行動を繰り返す遥に、美鈴はこう問いかけます。

「じゃあ村上さんの気持ちはどうなるの?」

これはもう至極真っ当な問い。客観的に見ると、遥は自分の思いを押し込めて無理しているようにしか見えないし、自分の意思と行動に相関性がないのは辛いに決まってますから。

でも、彼女自身は自己犠牲の精神でいるつもりではなかったんですよね。物語終盤で明かされる通り、遥は学校にいる人たちの性格や好きな物事について一人ずつ事細かくメモしていて、常に相手が求めていることを察知し、それを提供するような生活していたことが分かります。

このシーン、異常さに溢れていてこの作品における唯一のホラー要素なんですが、とにかく遥にとって周囲の人間から受け入れられることは、それがカタチだけのものだったとしても、一番重要なことだったわけです。
そして、求められる行動を繰り返すうち、自分の意思の介在さえ疑うくらいに空っぽの人形のようになってしまった。

前述したように、作中では生徒たちの悪口・噂話がイヤになるほど聞こえてきます。そういった他人の意識の奔流にいながら自分を保つこと、これは相当に至難の技だと思います。学校に限らず、イマドキは他人の思惑に簡単に触れることができてしまうもの。だから、美鈴の問いに「自分が分からない」と答えて俯く遥の気持ちにイタいほど共感できるんですよね。

「フラグタイム」美鈴だけが気づいた遥の息苦しさ

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

そんな遥は、自分に親しげに近づく人たちに対して「カースト上位の立場を維持するために私を利用している」と内心で非難していることを告白します。人気者の周りに集う人は、同じように人気者かのように見られますからね。

でも、この言葉が真実かどうかは別として、遥は自分がないという問題の本質から目を逸らすように原因を外に求めているようにも聞こえるんですよね。

そうした遥の傲慢さの陰に潜む喪失感や孤独感をも包み込むように、美鈴は言います。

「自分を棚に上げて、他人の選択を受け入れているつもりだろうけど、ぜんぶ自分で選択してるんだよ」

実際には美鈴はもっと激しい口調で吐き捨てて、遥を激昂させるんですが、本質を突く痛い言葉であるとともに、自分のありかを見失った遥を救う瞬間でもあります。

人の受容を求め続けたあげく利他的な振る舞いが本能のようなものと化して、自ら選択しているのか選択していないのかさえ分からなくなり、自分を見失ってしまった遥。それに対して美鈴は、“自分で選択している”遥は確かに存在している、と伝えているんですよね。

そして、「人に受け入れられるように努力をする村上さんが好き」と、遥自身の選択を肯定したうえで堂々の告白。二人が取っ組み合いのケンカをしているなかでこんな言葉が放たれるものだから、僕はもう激しさと優しさと愛しさとetc…で感情の振り子がブンブンと音を立てていました。

「フラグタイム」『もう逃げられないよ』と言う美鈴が見ていたもの

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

結局美鈴は時間停止していたことをクラスメイトの前でバラし、同時に遥に向けてこう言います。

「もう逃げられないよ」

それから遥は教室を飛び出して、上記の激しい言い合いに発展するんですが、「もう逃げられないよ」という言葉の意味は何だったのでしょう?


相手が望むであろうことを入念に研究し、それを叶えていた遥にとって、時間停止の力を持つ美鈴であっても、その他のクラスメイトと同じ枠に収まっていました。時間停止という信じられない力の存在を遥が簡単に受け入れるのも、「根本的には他の子と変わらない」という無意識の理解があったからだと思います。実際、時間が止まっていようと動いていようと美鈴を誘惑してドギマギさせるのは変わらないですから。
真実を知ったこと、つまり遥によってプロファイリングされた無数の人間のなかに自分も入っていたことから美鈴はショックを受けます。

が、時間停止を繰り返すうちに、普段の遥の振る舞いとのギャップが見えてくる。本人は自分がないと言っていたけれど、遥の行動には「人間関係を繋ぎとめなければならない」「人気者でなければならない」という強迫観念が感じられ、無理をしているように見える。これはもう美鈴のみぞ知る遥の姿ですよね。

で、そうした遥の息苦しさに気づくとき、同時に彼女の存在も見えてくる。遥に意思がないというのなら、美鈴の目に映る彼女をどう説明できるというのか?

美鈴が「もう逃げられないよ」と言って時間停止していたことを白状したのは、人気者を演じる遥とそうではない遥の境目をとっぱらうことで、そのどれもに共通の自分の存在があることを否応なしに突きつけるためだったといえます。

「フラグタイム」はかない時間がもたらしたもの

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

fragtimeというタイトルの通り、脆くて壊れやすい3分という時間。けれど、そのはかない時間こそが美鈴が遥にとっての枠を飛び越え、彼女の深層を見出す要因となったのでした。

エンディングでは、美鈴と遥は一緒にいるわけではなく、二人は廊下ですれ違うだけなんですよね。

彼女たちが心の通じ合う特別な関係に至るまでには確かに「3分間の時間停止」は不可欠だったのですが、この終わり方を見ると「特別な力が失くても、もう大丈夫」というメッセージのように感じられて、二人が胸を張って生きていく未来を想像させられました。

それは多分、本心をさらけ出して人と関わり傷つけ傷つけられた末に、決して一過性のものではない、長い人生において大切なことを見つけたからだと思います。

「フラグタイム」感想のまとめ

Youtube「【フラグタイム】劇場公開OVA 本予告【Fragtime OVA Main Trailer】」より

もはや百合アニメという設定を途中から忘れてしまうほどに、中高生の等身大の悩みがじっくり描かれていた本作。

「自分とは?」という疑問に現在進行形でぶち当たっている人に見て欲しい作品でした。不器用かもしれないけど日々のなかで無数の選択を重ねている遥や美鈴や小林さんたちの姿に、きっと感銘すると思います。

ちなみに現在「フラグタイム」の主題歌CDが発売されているんですが、エンディングで流れるEvery Little Thingの楽曲「fragile」のカバーのほか、HYの楽曲「AM11:00」のカバーもカップリングとして収録されています。
このキャラクターカバーがめっちゃイイので是非とも聴いていただきたい!
美鈴を演じる伊藤美来ちゃん、遥を演じる宮本侑芽ちゃんのウィスパーボイスが心にじんわり染み渡るのですよ。休日のまさに午前11時ごろ、何ともいえない空白のような時間に聞いて欲しい…。

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